早めに学校が終わったこともあり手持ち無沙汰の俺は先日行った例の教会に向かって歩いていた。

丘の上にある寂れた教会。
教会の裏には一本の木がありそこが俺と梨夜が出会った場所だということがわかった。

さすがに昼だと雰囲気が違うな。

明るく開放的な空間がそこには広がっている。

夜の現実離れした光景は夢だったのではないかとさえ思える。

それにさすがに夜の幽霊と噂されるだけあって昼には梨夜はこの場にいなかった。

普通に考えれば学校に行っている時間だからな。

不登校の不良少女なら昼からこの場にいるかもしれないと思っていたが、そこまでの不良少女ではなかったらしい。

「おや、来客とは珍しい」

声のする方向を見つめるとお爺さんと思われる見た目の物腰が柔らかそうな男性が立っていた。

「教会に礼拝かい?」

「いえ、違います。ですがこの教会ってもう潰れてしまったんじゃ、俺の学園ではそう噂になっていましたが」

「はっはっは、教会が潰れるとはこっけいだ。細々とだけど開放しているよ。礼拝する人なんてほとんどいないけど、たまに雑談を目的にやってくるお年寄りとかは来るね」

「そうなのですか・・・、そう言えば夜にやってくる女の子のことはご存知ですか?」

「あぁ、夜の少女のことか。あの子の婆さんとは昔から縁があってね。その婆さんがよく連れてきていたんだよ。あの子はお婆ちゃん子でね。人見知りで小動物みたいに婆さんの後ろに隠れていたな。人見知りだけれど慣れれば人懐っこい性格のお嬢ちゃんだったね。いつからだろうね、変な噂がたってしまってからは、あんなに人懐っこい性格だったお嬢ちゃんも変わってしまったよ」

「あいつに人懐っこい時期があったのか・・・」

「婆さんが亡くなってからは人との接触を極端に拒み、月が出る時間になるとよくここに来るようになったんだよ。あの子はよく婆さんと一緒に月を見に来ていたから思い出にふけっているのだろうか」

「あのぉ彼女の噂は本当だと思いますか?その、人の心がわかるという噂ですが」

「あぁ、あの噂は本当だと思うよ。わしの考えていることもわかるようだしね。同じ年齢の子や初めて彼女と会う人にとっては薄気味悪いと感じてしまうのは仕方ないと思うけれど、君は彼女を気味悪いと思わないのかい」

「一回しか会ったわけじゃないからまだわからないが不思議な子だとは思います。人との距離感というか」

「確かにあの子は人とあまり関わってこなかったからね。人との距離感とかもあまりわからないかもしれないね、本当に不器用な子だよ。でも元々はすごく人懐っこい子だから・・・不器用な分、悲しい子なんだ」

「そうなんですね」

「君は夜にまた彼女に会いに来るのかい?さすがに夜は教会は閉めてしまうけど」

「まだわかりませんが少しぶらぶらして夜になれば会うかもしれません」