早めの下校時間、梨乃は今日発売の本を買いに猛ダッシュで帰っていった。
普段はおっとりしている梨乃だが、シリーズ物の本の発売日だけは我先に帰ってしまう。
俺が教えた本ではあるが梨乃はすっかりはまってしまっている。
タイトルは夏空の夢、現代版の竹取物語と言われている話だ。
まだ完結しておらず発売日の次の日になると必ずと言っていいほどネタばれしながら熱弁してくる。
普段は10時間くらい寝る梨乃だけど発売日だけでは睡眠時間が6時間くらいになり眠い眠いと言ってくる。
眠くなるのがわかっているのなら一気に読まずに二日にわけて読めばいいと言っているが頑固な性格なのかこちらの話をまるで聞く気がない。
睡眠時間を大幅に削るため近場の本屋で売り切れると隣町まで買いに行かなくてはならず、読み始める時間が遅くなってしまうから全力で買いに行くらしい。
隣町へ行く労力を何とも思わないあたりさすがである。
予約すれば良いんだがひょっとして梨乃は予約の仕方をしらないのか?
当然発売日を知っている俺としては何度かからかったこともあるがその日に限ってはまったく動じない。
俺が冗談半分で今日はデートしてやると言っても、
「はぁ?りっちゃんには彼女さんいるでしょ?誘うなら彼女さんにしなよ、そういうだらしないところ治さないと杏に愛想つかれちゃうよ」と言ってくる始末。
その時は頭を軽く引っ叩いたが俺はそんなに悪くない・・・はず。
夏空の夢>>超えられない壁>睡眠時間>>俺。
幼馴染の梨乃にとって俺の存在って・・・。
柚明は柚明で昨日徹夜でゲームをしていたらしく机で寝ていたのでそのままにして下校した。
下校時間まで寝ているんだろうが家に帰って寝た方がいいと思うぞ。