記者会見で、黒部は


「高城選手のケガが重傷であり、復帰への道のりは決して平坦ではないことに変わりはない。しかし、今回の私の執刀は成功だったと断言出来る。彼は復帰への道を改めて歩み出したと申し上げて、差し支えないと思う。」


と言い切り、報道陣からの質問にも懇切丁寧に対応した。最後には


「要はこれまでの手術は全て失敗だったという認識でいいのか?」


とかなり辛辣な質問も飛んだが


「それは言い過ぎだ。私はあくまで、最後に少しお手伝いをさせていただいた。そう言うことだ。」


と答えて、会見を終えた。これを受けてマスコミは


『再手術成功、復帰への道筋見える。』


と報じ、松前日本代表監督も


「W杯開幕直前に本当にいいニュースが飛び込んで来た。我々は翔平の背番号9と共に戦い、日本のサポーターのみなさんに、必ず吉報をお届けしたい。」


とメッセージを発表。SNS上にも喜びと祝福のコメントが溢れた。


「翔平、よかったね。」


病室では、一緒にSNSに目を通していた朱莉が笑顔で語り掛けていた。


「ああ。俺の方からも改めて、みんなにお礼のメッセージを上げないとな。」


翔平も嬉しそうに頷いていた。


翌日から、早速リハビリが再開。1時間程、新しいスタッフの指導のもと、汗を流した翔平が病室に戻ると、朱莉と共に黒部が待っていた。


「先生。」


「おぅ、どうだった?」


「はい。なんか右足の感覚と力が少しずつですけど、戻って来てるなって、実感出来ました。」


「なら、よかった。」


と一瞬、笑顔を見せた黒部だが


「昨日はバタバタしてて、術後に顔を出せなくて済まなかったな。」


と詫びる。翔平は首を振り


「いえ。先生、いろいろとありがとうございました。」


と言って、頭を下げた。


「いや、お前が感謝すべき相手は俺じゃない、藤牧だろう。」


「先生・・・。」


「アイツのお前のことをひたむきに思うあの気持ちがなかったら、さすがに俺も火中の栗を拾う気にはならなかった。」


「そうだったんですか・・・。俺も未来から、あそこまで言ってもらったから、先生の再診を受ける決心がついたんです。」


「つまり、そう言うことだ。」


黒部は笑った。