そして、その時は来た。


「失礼します。」


そう言って入って来た1人の女性。


その姿は、翔平が最後に見た時とは大人びて、綺麗で、そして見違えるくらいに健康そうで、でも間違いなく、ずっと探し求め、再会出来ることを待ち望んだ人だった。


「未来・・・未来なんだな。」


掠れたような声でそう言った翔平に


「うん・・・お久しぶり・・・です。」


そう言ってペコリと頭を下げた未来。そして次に顔を上げた時、彼女の瞳からは涙が溢れていた。


「未来、こっちに来いよ!」


思わずそう呼び掛ける翔平。本当は駆け寄って、抱きしめたいのに、今はベッドを自力で降りることも出来ない自分がもどかしかった。


「うん・・・。」


と答えながらも、彼の傍らにいる朱莉にチラッと目をやり、未来は動こうとはしない。そんな彼女に気が付いた朱莉は


「側に行ってあげて下さい。翔平はずっとこの日が来るのを待ってたんです。」


そう言って、未来を促した。


「でも・・・。」


「早く来いよ。俺の方から行けねぇの、わかってんだろ。」


尚も躊躇う未来に、翔平は少し声を荒げる。コクンと頷いた未来はおずおずと、でも翔平の手の届くか届かないかのギリギリの所で立ち止まる。


「なんでそんな所で立ち止まるんだ?」


「翔くん、これ以上は、もう・・・。」


そう言って、未来はまた朱莉にチラリと視線を向ける。その心の内を知った翔平は


「元気になったんだな。」


と彼女の全身に視線を向けながら言った。


「うん・・・お陰様で・・・。」


「じゃ、なんで今まで、俺に会いに来てくれなかった?今まで、お前、どこで何してたんだよ?だいたい、何で急にお前と連絡を取れなくなっちまったんだよ!」


感情を高ぶらせた翔平は、思わず大きな声を出し


「ちょっと、翔平。」


慌てて朱莉が宥めるように声を掛ける。


「ごめんね、翔くん。本当にごめんなさい・・・。」


厳しい視線で自分を見つめる翔平に、未来はまた頭を下げていた。