部屋に鞄を置いて部屋着に着替えると、私はリビングのソファに座る。

特にいつも見ている訳じゃないけど、テレビをつけてぼーっと眺める。

今日も部活疲れたなあ・・・。

大会もうすぐだなあ・・・。


「那奈、スマホ鳴ってる」


トイレに行っていた世那が隣に座り、テーブルの上に置いていた私のスマホを指さした。

ぼーっとしすぎて気付いてなかった。

画面が光っていて、着信を知らせてる。

画面には“山本太一(たいち)”の文字。


「あ、もしもし。ごめんね、すぐ出られなくて」


私はスマホを耳にあてて話しながらリビングを出て、自分の部屋に入った。


『ううん。今大丈夫?』

「うん。さっき家に着いて、ぼーっとしてたとこ」

『珍しいじゃん。勉強してたのかと思った』

「あー、今日はお母さんいないから」


山本くんには、私の家庭事情を小出しにしていたから、大体は分かってくれている。


『なるほどね。じゃあ、満喫しないと』

「そうなの。あ、何か用事があった?」