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「おはよ。すっかり寒くなったよね」
校内に入り自転車を押していると、後ろから来た山本くんが隣に並んだ。
山本くんの首には、暖かそうなチェック柄のマフラーが巻かれている。
「ほんと、寒いね。山本くんも寒いの苦手?」
「んー、苦手だけど、暑いよりはマシかな」
確かに、夏は脱いでも脱いでも暑いけど、冬はいっぱい着込んだり体を動かしたりすれば体は温まるもんね。
「分かる気がする」
「髙橋は暑いのも寒いのも苦手そう」
いつの間にか、山本くんは私のことを“髙橋さん”と呼ばなくなった。
私的にはどっちでもよかったんだけど、私は“山本くん”のままでいいのかな。
「あれ、髙橋」
「ん?」
山本くんが顔をのぞきこんできて、ちょっと恥ずかしくて目をそらした。
「髪切った?」
「え、うん、切った、けど。よく分かったね」
「そりゃ分かるよ。前髪作ったんだ」