「那奈」

「なにー?」


前後に並んでいるから、湊に私の声が届くように少し大きめの声で返す。


「この勉強会って、山本から誘われたの?」

「そうだよ」

「何で?」


その問いには困った。

『何で?』と訊かれて“確かに”って思ったから。


「何か言ってよ」


黙ってる私に湊が言った。


「えー、だって。何でだろうって思って」

「何だそれ」


湊は多分笑ってる。

声が少し高くなったから。


「山本から何か言われてないの?」

「何かって?」


湊は何が言いたいんだろう。


「いや、言われてないならいいんだけど」


よく分からない。

山本くんには、何も言われてない、と、思う。


「じゃ、また学校で」

「あ、うん。送ってくれてありがとう」

「いえいえ。じゃ」


湊は軽く片手を上げて、Uターンして家へと帰っていった。