いくらしっかりしてるとは言え、まだ小学生の世那を一人にしてしまうのは気が引ける。
「あ、世那なら俺が預かろうか?特に約束もないし」
思いがけない湊の言葉。
「うん、僕も湊くんと回る」
「そう?じゃあ、お願いします」
湊にぺこりと頭を下げ、世那に軽く手を振り明花と歩き出した。
「あの子、那奈の弟?」
「あ、うん。世那って言うの。小学6年生」
「へー。井上とも仲いいんだね」
「まあ、みんな幼なじみみたいなもんだから」
多分、人数が多いところで生まれ育った人たちには理解できない。
仲がいいから話す、とかじゃなくて、みんなが兄弟みたいなもので、何もなくても話すんだよね。
「そういえば、喫茶店やってるとこがあるって聞いたよ。えっとね・・・」
明花は文化祭のパンフレットを開く。
私も隣から覗き込み、喫茶店らしきマークを見付けた。