校内では自転車の走行が禁止されているため、私と湊は自転車を押して歩く。
「那奈のクラスって仲いいよな」
「え、そう?」
「うん。めっちゃ仲いいと思う」
確かに仲はいいけど、他のクラスから見てもそうなんだ。
「やっぱ、山本くんの力なのかなー」
「あー、山本ね。いっつも声聞こえる」
湊は思い出し笑いをしている。
確かに、山本くんの声ってすごく大きいもんね。
「よし、行くぞ」
自転車にまたがって走り出すとき、湊は決まってこう言う。
そんなに気合を入れるものではないと思うんだけど。
「ついてこいよ」
「はいはい」
いつものやり取り過ぎて、私は適当に返事をする。
湊も特に気にしてない。