「なーんだ、そんなこと。気にするだけ無駄無駄。ほら、帰るぞ」
そう言って立ち上がった湊は、私の楽譜ファイルを閉じ、渡してきた。
「髙橋が俺と帰るのが嫌だって言うんだったら仕方ないけど、そんな理由だったら受け付けない」
真っ直ぐな瞳。嫌な訳ないじゃん。
大切な幼なじみなんだから。
「・・・分かった。すぐ片付けるから」
「おー」
練習しようとしていたビブラフォンにカバーをかけ、マレットを所定の位置に片付けた。
楽譜ファイルは端が折れないようにそっと鞄に入れる。
「お待たせ」
「よし、帰るか」
「うん」
泉に何て思われてもかまわない。
だって、私と湊は正真正銘の幼なじみなんだから。