「あ、那奈先生だ」
私が産休前まで担任をしていた教室の前を通りかかったとき、中にいた先生が一人の児童を呼び寄せた。
この時間は、スクールバスで通学している児童がまだ残っている時間。
今いるのは、もしかして。
「那奈せんせー!」
やっぱり、陽菜ちゃんだ。
「陽菜ちゃん、久しぶりだね」
「赤ちゃん?」
さすが陽菜ちゃん、すぐに気付いた。
「そうだよ。那奈先生の赤ちゃん。理久くんです」
「りくくん・・・かわいーね」
「ありがとう」
私がお礼を言うと、陽菜ちゃんは恥ずかしそうにしながら教室の中に戻っていった。
「山瀬先生、どう?慣れた?」
「まー、ちょっとは?」
「いやいや、もうすっかりベテラン感出てますよねー」
真知子先生が山瀬先生をからかう。
山瀬先生は、実は太一くんの東京の高校の同級生。
私の産休代理で来てくれる先生が山瀬先生って聞いた日に太一くんに話したら発覚して、びっくりした。