ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「え、井上と那奈って付き合ってる訳じゃないの!?」
昼休みの音楽室、絨毯張りの教室は音が響きにくいのに、オーボエ担当の泉の声がこだました気がした。
「当たり前だよ。逆に何でそう思ったの?」
秋が深まってきた10月の中頃、私はすっかり吹奏楽部になじんでいた。
部活に顔を出すのも緊張しないし、昼休みにはこうして吹奏楽部の1年生で仲良しのオーボエ泉とチューバ未知と一緒にご飯を食べている。
あ、吹奏楽部じゃないけど、明花も一緒に。
「だって、井上と那奈ってめっちゃ仲良しじゃん!」
「大袈裟だよ。別に普通だって」
「どこが!帰りだって一緒に帰ってるじゃん!」
泉、手にサンドイッチ持ってること忘れてないよね?
玉子が落ちそうになってるけど。
私が玉子をじっと見ていると、さすがに気付いたのか、泉はサンドイッチをパクリと食べた。