既に定年退職しているご両親を太一くんは心配していて、私から東京に引っ越すことを提案した。
引っ越したのは八重が幼稚園に入園する前のことだから、もう4年くらい前になる。
さすがに慣れた。
「大丈夫だって。太一くんのご両親もいるし、何とかなるよ」
「強くなったなー」
「おかーさん、もっと弱かったの?」
急に八重が会話に入ってきた。
「おー、それはそれは弱かったんだよ」
玄関の鍵を開けながら太一くんが冗談めかして言う。
もー、またそんな言い方して・・・。
「えー!今はこんなに怖いのに?」
八重・・・。正直すぎるって。
靴を脱ぎながらも八重の口は止まらない。
「八重ちゃんとどっちが弱い?あ、ふーちゃんとどっちが弱い?おとーさんはずっと強いから違うけど、さーちゃんよりも弱い?」
さーちゃんというのは、一花ちゃんの子どものことで、八重と双葉にとってはいとこになる。