「山本八重さん」
体育館に、20代前半の先生の声が響く。
「はーい!」
そして、それに応えて手を挙げて立つ女の子。
心の中で安心して見ていると、ドヤ顔をして後ろを振り向いた。
周りからは『かわいー』と聞こえてくる。
やめてください、調子に乗るから。
今日は、我が子の小学校の入学式。
もうすぐ生まれて7年になるなんて、信じられない。
ついこの間私のお腹から出てきたと思っていたのに。
「くくく・・・」
声に反応して右隣を見ると、太一くんがビデオカメラ片手に笑いをこらえてる。
ビデオが震えてるんだけど。
そうやって、お父さんが面白おかしく反応するから余計に調子に乗るんだってば。
私は太一くんにバレないように小さくため息をついた。