「うん。私も、転校してきたのが山本でよかったよ。

山本に出会えてよかった。こちらこそありがとう」


涙はまだ止まらない。

だけど、清水は笑顔で言ってくれた。

湊の言うように、俺はこの手の感情に鈍感なのかもしれない。

ほぼ毎日一緒にいたのに、全然気づかなかった。


「あのさ、勝手だと思うけど、これで気まずくなるとか絶対嫌だから」


まだ溢れる涙を拭いながら、清水が言った。


「これからもよき友達でいてよね」

「うん。言われなくてもそのつもりだよ」


俺が答えると、清水は『あー、よかった』と笑った。

あー、俺は幸せ者だ。

こっちに来て友達ができるか不安しかなかったけど、山本や清水みたいな友達ができて。

地元だけじゃなくて大切な場所ができた。


「じゃあ、また会おうね」

「うん。また」


遠くに両親の姿を見付けた清水は、俺と山瀬に手を振って走っていった。