「好きだったよ。今までありがとね」


小さいけど、今度はちゃんと聞こえた。

また顔を清水の方に向けそうになったけど、我慢した。


「ほら。明日からも頑張れよ。

山本、遠くに行くことになるけど、元気でな」

「はい。ありがとうございました」


担任は、俺の肩をポンと叩いて去っていった。


「清水」


一足先に看板から離れた清水の後を追って、追いついた。


「ごめんね。言わないでおこうと思ってたんだけど・・・」


そう言う清水の目には、涙がいっぱいたまってる。


「山本、地元に好きな子いるんでしょ?

絶対、その子と幸せになってね」


清水の目から、ついに涙があふれ出た。

『ごめん』と言って慌ててハンカチで拭ってる。

でも、拭っても拭ってもおさまらない涙。


「清水、ありがとう。

転校してきて、最初に声を掛けてくれたのが清水でよかった」