髙橋の方から別の話題を振ってくれたことに、勝手ながら安心する。

幻滅してたら会話を続けようとなんかしないよな。

ってか、湊、俺の話を髙橋にしてるんだ。

ちょっと意外かも。


『今まで野球部で忙しかったもんね』

「うん。髙橋は、元気?」

『うん、元気だよ』

「そっか、よかった。あ、ごめん、母さんが呼んでる」


本当はもっと話したかったけど、ドアの向こうから母さんが俺を呼んでる声がする。

電話するってちゃんと伝えたから待ってほしいけど、仕方ない。


『うん。じゃあ、ね』

「うん。来てくれてありがとう」


通話を終了するボタンをタップした。

しばらくスマホを見つめ、“3分”と示された通話時間をぼーっと眺めた。

名残惜しさを感じながら、『母さん、何ー?』と言いながら部屋を出た。