ん?何で母さんが髙橋の名前知ってるんだ?

俺、髙橋の話したことあったっけ。

記憶の引き出しを探し回るけど、全然心当たりがない。


「母さんに髙橋の話したことあったっけ」

「え、だって、引っ越すときに来てくれたって話したじゃない」

「知らないんだけど」


どういうこと?

母さんは『言ってなかったっけ』と焦ってる。

母さんの話によると、父さんと俺が家を探すために地元を出発した直後、髙橋が俺に会いに来てくれたらしい。


「ちょっと電話してくる!」


俺は勢いよく立ち上がり、部屋に入ってスマホを操作してLINEを起動させる。

すぐに“髙橋那奈”の文字を見つけて電話のマークをタップした。