那奈(なな)、大丈夫?」


目の前に、弟の世那(せな)の顔があって、3秒しないと夢を見ていたことを理解できなかった。

どうやらテレビを見ているうちに眠ってしまったらしい。

枕代わりとなっていた右腕には、髪の毛の跡がくっきりとついている。


「夢でも見てた?」


世那の言葉に無言でうなずきながら、何気なく右手を顔の前に持ってくる。

もちろん、ネイルなんてしていない。


「正夢・・・?な訳ないか」

「え?」


小さくつぶやいた私の言葉を世那が聞き返してきたけど、何も答えなかった。

もしもあれが正夢だとしても、実際に起きるのは多分10年くらい後のこと。

そのころには、この夢のことは忘れてしまってるはずだから。