きっと、一花も今頃俺と同じように感じているんだろうな。
いや、俺以上に心細さを感じているかもしれない。
帰ったらフォローしてやらないと。
「山本、もしかして野球部?」
廊下の人がもう少し少なくなったら出ようと思ってぼーっとしていたら、前の席の女子が話し掛けてきた。
「いや、鞄にそれっぽいもの付いてたから、もしかして、って思って」
確かに、俺の鞄にはバットとグローブの形をしたストラップがついている。
まだ名前も知らないけど、観察力がすごいんだな。
「あ、もしかして噂の転校生?」
俺の席の横にある窓から今度は男子生徒が現れた。
「そうそう。なんか、野球部っぽいよ」
俺はまだ何も言ってないんだけど。
「え、まじで?俺、野球部!」
目の前でテンポよく会話をする2人を眺めていると、2人同時に俺を見た。
「・・・えっと」
口から出た声は自分でもびっくりするくらいか細い。