すごく申し訳なさそうに頭を下げた父さん。
転勤・・・になっただけだよね。
それなのに、何でそんなに申し訳なさそうになるんだよ。
「9月から東京、なんだ」
「・・・え?」
父さんが言った言葉はちゃんと耳に届いているのに、理解できない。
えっと、今が8月だから・・・。
そして、ここは四国だから・・・。
「太一はもう高校生だし、2年のこの時期に転校するのも大変だろうから、こっちで親戚の家に下宿させてもらってもいいと思う」
ずっと黙っていた母さんが口を開いた。
ちょっと待ってよ。
まだ、父さんの言葉を咀嚼できてない。
「それなら、一花も兄ちゃんと一緒がいい」
部屋に行ったままだと思っていた一花は、いつからそこにいたのか、リビングの入口から少しだけ顔をのぞかせている。
「何言ってるの。一花はまだ中学生なんだから」
「でも、一花だって2年の今の時期に転校するのは大変だよ」