思ったことを正直に言っただけなのに、智哉は疑うような目で俺を見る。
「何だよ」
「そんなこと言ってると、取り返しのつかないことになるぞ」
「取り返しのつかないことって、どんなことだよ」
「それは分からないけど」
「何だそれ」
適当なところがある智哉だけど、何故かこのときのこの言葉は俺の心にチクリと刺さった。
その痛みはすぐになくなってしまうくらいに小さなものだったけど。
「じゃあ、また部活で」
「おー」
智哉と別れて教室に入る。
席は、廊下側の一番後ろ。
“山本”だから大抵この辺なんだよね。
机の横に鞄を掛けて、1年間一緒に過ごすクラスメイトの様子を観察していたら、廊下から木村が騒ぐ声が聞こえた。
微かにだけど、髙橋の声も一緒に聞こえる。
俺は、生徒手帳のメモになっているページを1枚破る。
急いで短い文章を書くと、4つ折りにした。
“隣になっちゃったけど、よろしくね😊
よかったら、部活がない日は一緒に帰らない?”