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「おかえり」
階段を上がると、世那が自分の部屋から顔を出した。
足音で私って分かったんだね。
「ただいま」
「部活、どうだった?」
もしかして、心配してくれてたの?
「うん、楽しかったよ」
右手でブイサインを作って見せた。
初日で初めてのことがたくさんありすぎて疲れたけど、間違いなく楽しかった。
「よかったね。明日からも練習?」
「うん。さっきお母さんに練習予定渡してきた。ほぼ毎日1日練習」
お母さんには、ちょっとだけ嫌そうな顔をされた。
でもすぐに勉強をちゃんとすることを伝えたら、困った顔で『じゃあ、お弁当作り頑張るね』って言ってくれた。
お母さんだって、わざと私を辛い目に合わせようとしてる訳じゃないんだよね。
「頑張って」
そう言うと世那は、お父さんがするみたいに右手で拳を作って自分の胸の前に軽く突き出した。
私も同じようにして、軽くぶつける。
これは、私と世那が小さい頃からお父さんがしてくれた、おまじないのようなもの。
これをすると、不思議と勇気がわいてくる気がする。
「ありがと」
「うん」
少しだけ照れ臭そうにして、世那は再び部屋の中に消えた。