「ただいまー」
玄関のドアを開けて家の中に入ると、ドタドタと足音を立てながら一花が階段を下りて来た。
「みっちゃん来てた?」
「え、うん。来てたけど」
あまりの勢いに驚きながら答えると、一花は少し不機嫌そうな顔をした。
「ローファー返したかったのに・・・」
「あー、ローファーは一花にあげるって言ってたよ」
「え、いいのかな・・・」
一花は俺には強気に出るけど、一歩家の外に出ると気が弱くなる。
瀬尾のことは大好きだけど、迷惑はかけたくないって思ってるんだろうな。
「いいって。瀬尾にはもう小さいんだって」
「そうなんだ」
「うん。ってか、見つかったの?」
ローファーを返すって言いだしたってことは、見つかったってこと?
「あ、うん。見つかったよ。今日の大掃除で」
なんとなく、一花の言い方で、見つかった場所がうれしくない場所ってことは分かった。
だから、それ以上何も聞かなかった。