「俺から母さんに話してもいい?それから、瀬尾にローファー借りれるか頼んでみよう」
「みっちゃんに?」
俺は深く頷いた。
一花は少し落ち着いたみたいで、俺の顔を見て小さく頷いた。
「よし、帰るか」
俺は再び自転車を押し、いつもより少しゆっくり、一花の歩幅に合わせて歩いた。
俺の隣を歩く一花は時折ため息をついてはいるけど、さっきまでの張りつめた感じはなくなっている。
俺が気づけてよかった。
もし気付けなかったら、一花は一人で苦しむところだった。
「一花、先に俺が母さんと話すから、一花は部屋で待ってて。ね?」
家の敷地内に自転車を停めた俺は一花にそう言い、玄関のドアを開けた。