「一花、一花が大丈夫なのは分かったから。何がなくなったのか教えて」
「・・・・・・・・・ローファー」
一花の足を見ると、確かにローファーは履いていなくて、代わりにグラウンドシューズを履いている。
でも、それは別に珍しいことじゃない。
寒いとか、足が痛いとかの理由でグラウンドシューズを履いて登下校することは今までもあった。
でも、そのときはちゃんと家にローファーがあったんだ。
つまり、今朝はローファーで登校したのに、下校時になくなっていて、探してもなくて、仕方なくグラウンドシューズで下校したってこと。
「母さんに自分で言える?」
一花は思いっきり首を横に振った。
一花は、昔からこういう子だった。
友達にちょっと嫌なことをされたり、してもいないことで先生に注意されたりして辛くなっても、自分から親には絶対に言わない。
その代わり、俺が気づけば話してくれる。