「そりゃそうだよね。あのね、髙橋さんって、井上と付き合ってる?」


よし、訊けた。

このことが気になって、今日の練習を企画したんだ。


「それ、泉にも言われた。でも、付き合ってなんかないよ。でも、何でそう思ったの?」


髙橋は慣れた感じで言った。

やっぱり、仲が良さそうに見えるから、みんなにそう思われてるんだろうな。


「あー、部活終わって帰るとき、たまに2人を見かけるんだよね。そのときの髙橋さん、すごくリラックスした感じだし、1回、井上が髙橋さんのこと那奈って呼ぶの聞いちゃって」


初めて2人を見かけた日を境に、何回か同じように一緒に帰る様子を見たことがある。

髙橋が井上のことを『湊』って呼ぶだけじゃなくて、井上も髙橋のことを『那奈』って呼んでた。


「井上くんとは地元が一緒でね、私のこと心配して一緒に帰ってくれてるの。それだけだよ」


なんだ、地元が一緒なんだ。

なんだか安心した俺は、思わず天井を仰いで息を吐いた。

不思議そうな顔をしている髙橋に『月曜日、頑張ろうぜ』と言い残し、走り出しそうな気持ちで生物室を出た。