「じゃあ、今日は合奏もないことだし、ちょっとの間雑談タイムにしよー」
飯田先輩が言うと、朝倉先輩と森本先輩も同意している。
いきなり練習に突入するよりも、緊張がほぐれていいかも。
「楓と奈央子は、後輩に何て呼ばれたいの?」
あ、名前の呼び方、私も気になってた。
中学のコーラス部では、仲のいい先輩のことは、下の名前に先輩を付けて呼んでたから。
「えー、名字よりは下の名前の方がいいなー」
「私も。名字だとちょっと距離がありますよね」
朝倉先輩と森本先輩はそれぞれそう言うと、期待に満ちた目を私に向けた。
ちょっと照れくさい。
「あ、はい。じゃあ、楓先輩と、奈央子先輩って呼びます」
私が言うと、2人ともハイタッチをして喜んでくれた。
仲いいんだなあ。
「私のことも美里先輩って呼んでね」
美里先輩は、軽くウインクをした。
そんな行為が似合うくらい、美里先輩はクールでかっこいい雰囲気。
「あ、はい。美里先輩って呼びます」
美里先輩は満足そうにうなずくと、また口を動かし言葉を紡ぐ。