「じゃあ、美里(みさと)、あとはよろしくね」


南先輩は、そう言うと私の背中を軽くたたき、微笑んで音楽室から出ていった。

残された私は、急に心細くなる。

実は人見知りなんだよね。


「えーっと、まずは自己紹介しよっか」


青名札の先輩が言うと、紫名札の先輩2人が、音楽室の中に並んだ椅子を4つ丸くなるくなるように配置した。

それぞれ座ったから、私も空いた椅子に座る。


「まず、私は3年の飯田(いいだ)美里です。よろしくね」


私も消え入りそうな声で『よろしくお願いします』と続く。


「2年の朝倉楓(あさくらかえで)です」

「同じく2年の森本奈央子(もりもとなおこ)です」


紫名札の先輩たちの自己紹介が終わると、みんなの視線が再び私の方に向く。

次は私の番だ。


「えっと、1年の髙橋那奈です。よろしくお願いします」


パチパチパチ、と温かい拍手が聞こえる。

恥ずかしくて耳まで熱い。でも、何だか心地よい。