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「ただいまー」


玄関のドアを閉めて鍵をかける。

靴を脱ごうと振り返ると、玄関を上がってすぐの階段を妹の一花(いちか)が降りて来た。


「あ、おかえり」

「おー」


珍しく一花の方から話しかけてきてくれてうれしいけど、あまり露骨に顔に出すと嫌がられるといけないから、我慢して抑えた。

中学1年になった一花は、何故か俺にだけ反抗期なんだよな。


「あ、太一」

「ん?」


台所から母さんに呼ばれ、階段に足をかけて返事をする。


「これ、瀬尾さんとこに持って行ってくれない?」


声だけじゃなくて姿も見せた母さんは、手に紙袋を持っている。

中には、俺が着られなくなった服がたくさん入ってる。

母さんと瀬尾のおばさんが仲良しなのは知ってるけど、何で服?


「この前会ったときにね、隼人(はやと)くんの服がすぐ着られなくなっちゃうから、太一のお下がりもらえないかって相談されたのよ。だから、はい」

「んー、まあ、持っていくけど」

「お願いします」