「ありがと、めっちゃ助かった」
2人はノートを配るとこまで手伝ってくれたから、笑顔でお礼を言う。
『全然。どういたしまして』と笑顔で言う近本に対し、髙橋は『うん』と遠慮がちにうなずくだけ。
割と社交的な近本とは何度か話したことがあったけど、髙橋と話すのは初めてだと思う。
多分、人見知りなんだと思う。
「おかえり太一。担任に頼まれたん?」
1年の野球部数人で集まっている輪に加わると、智哉が言った。
「あー、うん。ってか、気付いてるなら智哉が手伝えよー」
一部始終を黙って見られていたかと思うと、ちょっと恥ずかしい。
「え、女子に手伝ってもらった方がうれしいかと思って」
智哉の冗談に『何だよそれ』と返し、何気なく髙橋と近本の席の方を見る。
2人はもう教室からいなくなっていて、髙橋の机の上には1冊の本があるだけだった。