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「あ、山本」


昼休み、部活の顧問に用事があって職員室に行った帰り、担任に呼び止められた。


「これ、みんなに配ってもらっていい?」


そう言って渡されたクラス全員分の理科のノート。

力はある方だけど、入学して2週間で既に大量に貼られたプリントが重たくのしかかる。


「わっかりました」

「ありがとう」

「いえ」


ちょっと顔が引きつりながらも引き受け、教室へと向かう。

職員室は2階、教室は3階だから、この大量のノートを持ったまま階段を上がらないといけない。

階段を踏み外さないように気を付けながら、ゆっくり歩く。


「山本、大丈夫?手伝うよ」


後ろから声を掛けられて立ち止まり、ゆっくり顔を動かすと、同じクラスの近本(ちかもと)と髙橋が立っていた。

髙橋も、『あ、私も手伝うよ』と言ってくれている。

このままかっこつけてても仕方ないし、頼むか。


「ありがと。じゃあ、お願い」


近本と髙橋にノートを10冊ずつくらい渡し、一緒に教室に入る。