「太一、買い物行って来てくれない?」


春の日差しが降り注ぐ部屋でうたた寝をしていると、突然母さんが部屋に入って来た。

いつも『ノックして』って言ってるのに。


「あ、ごめん、寝てた?」

「あー、いや、いいけど。何?」


寝起きであまり働かない頭を頑張って働かせていると、メモを渡された。

牛乳、卵、ミニトマト・・・。

スーパーだな。


「行ってきます」

「はーい。お願いします」


エコバッグを渡されて家を出た。

特にすることがない春休みも、今日まで。

明日からは高校生活が始まる。


「いらっしゃいませー」


徒歩10分のところにあるスーパーに着き、かごを持つ。

母さんからもらったメモを確認しながら品物をかごに入れていく。


「あ、瀬尾じゃん」


乳製品コーナーには、中学の同級生の瀬尾の姿があった。


「あー、山本もおつかい?」

「うん」


瀬尾とは特別仲が良いって訳ではないけど、中学3年間同じクラスだったから会えば言葉は交わす。


「明日だね、入学式」

「あー、そうだな」

「ちょっと緊張しない?」