「その人って、どんな人?」
「あのね、高1のときに同じクラスだった山本くんって人なんだけど・・・」
瞬先生とちゃんと付き合うためには、山本くんのことは隠したらだめだ。
私は、全てをちゃんと伝えることにした。
合唱コンクールの練習をきっかけに話すようになったこと、テスト期間に一緒に勉強するようになったこと、転校することが決まって連絡があったこと、大学生のときには地元に戻ってきていたらしいこと。
全てを包み隠さずに話した。
ところどころ言葉に詰まったり、言いにくいこともあったけど、全て。
瞬先生は、ときどき『うん』『それで?』と相槌を打ちながら、穏やかに聞いてくれた。
そして、私は気付いてしまった。
やっぱり、私はまだ山本くんのことを思い出になんてできていない。
まだまだ消化不良の状態なんだ。