「あ、おっつー」
スイーツを何にするか考えていると、横に誰かが並んだ。
顔を見なくても誰なのかはすぐに分かったけど、一応顔を上げる。
「お疲れ」
高校の吹奏楽部で一緒だった、トロンボーンの実結。
大学を卒業してすぐに、近くに住んでいることが判明して驚いた。
「ねー、瞬と連絡取ってる?」
「うん、取ってるよ」
「そっか。それならよかった」
瞬先生は、実結のいとこ。
『誰か紹介して』と頼まれ、ずっと彼氏がいない私に白羽の矢がたった。
そして、偶然なのか必然なのか、同じ学校に勤務している同期の先生。
周りにも私と瞬先生のことは知れ渡っているから、ときどき“最近どう?”みたいなことを聞かれる。
「じゃあね」
どのケーキにするか決めた私は実結と別れ、レジに向かう。
迷ってはいたけど、結局いつもチーズケーキを選んでしまうんだよなあ。