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「ほんっとうにありがとう!!!」


そう言って私の手を両手でぎゅっと握りしめているのは、吹奏楽部部長の(みなみ)先輩。

無事、お母さんの許可を勝ち取り、ゴールデンウィーク前日に私は吹奏楽部に入部した。

部員への挨拶は、ついさっきミーティングで終えたばかりで、まだパートも決まってない。


「あ、いえ・・・。こんな中途半端な時期に、すみません」


先輩の迫力に、思わず声が裏返りそうになった。


「南先輩、パート練、2の4になりました」


廊下からひょっこり顔を出したのは、湊。


「あ、髙橋。ほんとに入部してくれてありがとな」

「え、もしかして井上くんが勧誘してくれたの?」

「あ、はい」


このやり取りで、南先輩と湊が同じパートを担当してるんだって分かった。

先輩が首から下げているストラップから推察すると、多分サックス。

へえ、湊サックス吹くんだ。

脳内でサックスを吹く湊を想像し、意外と似合うなと思った。