大学を卒業して3年目。
私は、特別支援学校の先生として働いている。
今年度は1年生の担任になった。
「あー、那奈先生ありがとう」
葉月先生がかおちゃんと一緒に内接トイレから戻ってきた。
「いえいえ。かおちゃん間に合わなかったんですね」
「惜しかったんだけどねー」
葉月先生は、かおちゃんに『トイレって言えて偉かったねー』とハグをしている。
かおちゃんは、今はトイレでおしっこをする練習中。
“おしっこはトイレでするもの”という認識はできてきたみたいだけど、まだタイミングがつかめないらしく、今日みたいにトイレにたどり着く直前に漏らしてしまうことが多い。
「はい、できたね」
しょうくんのプリントも、無事にファイルにおさまった。
私は、しょうくんの顔をじっと見る。
「ありがと」
「どういたしまして」
手伝ってもらったら“ありがとう”、困ったときは“手伝って”。
当たり前のようだけど、それが難しい子どもたち。
一つ一つ場面を捉えて教えていき、少しずつ定着していく様子を見るのが何よりもやりがいがある。