「ねえ、優花と湊付き合ってるんだって?」
会の開始までまだ少し時間があるから、各テーブルでは思い出話や近況報告に花が咲いている。
吹部テーブルでも、恋バナが始まった。
「えー、その話はなしで」
優花は照れてしまって、顔が赤くなっている。
順調みたいでよかった。
「いやいや、なしでは切り抜けられないから」
泉や未知にも詰められてる。
助けてあげたいけど、正直私はそれどころじゃない。
山本くんは来ないんだろうな、と思いつつソワソワしてしまう。
「井上、結局山本って来るんだっけ」
浅海くんが近付いてきて、湊に言った。
“山本”という単語に、私は過剰に反応してしまう。
湊は、私の様子を気にするようにチラッとこっちを向いてから、『来ないって』と言った。
浅海くんは『りょーかい』と、テーブルを離れた。
やっぱり、来ないんだ。
分かってはいたけど、ちょっとショックかな。