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「那奈、帰り何か食べて帰らない?」


6限終了後、辺りはすっかり暗くなり、大学の前を走る車もライトを点灯している。


「そうだね。どこ行く?」


同じ講義を受けていた明花と並び、『最近寒くなってきたよね』と話す。

私たちは2年になり、後期が始まってもうすぐ1か月が経つ。


「そうだ。中学の方の授業で一緒の男子が、那奈のこと気になってるんだって。紹介してって頼まれたんだけど、どう?」

「えー、今はそんな気持ちになれないかなー」

「そっか。でも、今のままじゃいつまで経ってもそんな気持ちにはなれそうもないけどね」


明花の言葉に『ははは』と渇いた笑いを返す。

普段は抑え込んでいるはずの山本くんへの気持ちが、ふと恋愛系の話になると、ひょっこり顔を出す。


「成人式には帰るんでしょ?」

「そうだね。さすがに帰るし、同窓会にも出るよ」


私の言葉に、明花は安心したようにうなずいた。