確かに、弱小チームだったし、そんなに忙しい部活じゃなかった。
だけど、毎日放課後練習してから家に帰って、宿題と予習をしてた。
「それに、せっかく受験勉強頑張って入学したんだから、楽しまないと」
「うん、そうだよね」
「そうそう。後で、一緒にお母さんに話してみよう」
そう言ってお父さんは右手で拳を作り、自分の胸の前に軽く突き出した。
「ありがとう」
私も同じように右手で拳を作り、お父さんのそれと軽くぶつけた。
「じゃ、後でね」
お父さんは、また静かに廊下に出た。
湊と話してからずっと、自分の中でモヤモヤしていたものが、ちょっと晴れた。
完全に晴れるには、お母さんを説得して吹奏楽部員になるしかないと思う。
お母さんが許可してくれるかどうかは、正直分からない。
でも、許可してくれたらいいな、とは思う。
「頑張ろう」
私は一人ぽつりとつぶやき、再び読んでいた本に視線を落とした。