「那奈」


後輩たちと別れて階段を下りていると、後ろから呼び止められた。


「卒業しちゃったね」

「うん」

「答辞、かっこよかった」

「ありがとう」


そう、私は卒業生代表で答辞を読んだ。

何で私が選ばれたのかはよく分からないけど、みんなが自由登校期間に入ってからも、私はほぼ毎日登校して先生と一緒に文章を考えた。


「大学でもよろしくね」

「うん。2人とも受かってよかったよね」

「ほんとに」


私と明花は、偶然だけど同じ大学を受験し、合格した。

お互い受験直前に知って、びっくりしたんだよね。

学部は違うけど、他の友達よりは会える機会が多い。


「たまに泊まりに行ってもいい?」

「うん。私も泊まらせてね」

「もちろん」


私と明花は、4月から一人暮らしを始める。

家から出ることについて不安はあるけど、楽しみも大きい。