『髙橋、俺、今まで知らなくてごめん』

「え?」

『夏休み、俺が電話したあと、家に来てくれたって、さっき知った』

「あ、ううん、全然。会えないかもって思いながら行ったから」

『ごめん。さっき母さんに聞くまで知らなくて・・・』


そんな落ち込まないでよ。

そのことに関しては、私全然気にしてないのに。


「山本くん、元気?湊から聞いたよ。帰宅部だって」

『あー、うん。元気。帰宅部だから、嫌でも勉強する時間がいっぱいあるんだよね。めっちゃ暇』


あ、ちょっと声が明るくなった。


「今まで野球部で忙しかったもんね」

『うん。髙橋は、元気?』

「うん、元気だよ」

『そっか、よかった。あ、ごめん、母さんが呼んでる』


電話の向こうで『太一、ちょっと来て』と女性の声が聞こえた。


「うん。じゃあ、ね」

『うん。来てくれてありがとう』


電話が切れた。

しばらくスマホを見つめ、“3分”と示された通話時間をぼーっと眺めた。