「ねー、那奈」

「ん?」

「明日、頑張ろうね」

「うん。頑張ろうね」


何となくだけど、未知は違うことを言おうとしてた気がする。

多分、山本くん関係のこと。

でも、未知は言わずにいてくれた。

その空気が、今はとてもありがたい。


「お待たせー」


テラスにいた私たちに声を掛けてきたのは湊。

首にはすでにマフラーが巻かれている。


「遅い!」

「しょうがねーじゃん。明日本番なんだから」

「はいはい。じゃあね、那奈」

「うん。ばいばい」


未知は鞄を肩に掛けると、湊を睨みつけながらテラスを出ていった。


「怖いわー」

「まあまあ、帰ろ」

「だな」


私と湊はいつものように歩き出した。

並んで気付いたけど、湊、背伸びた?

前から高かったけど、更に高くなった気がする。


「湊、背伸びたよね?」

「え?あー、1年ときより10センチくらいは伸びたと思う」


やっぱり。私は中3からほとんど伸びてないのにな。


「那奈が縮んだと思ってたけど、俺が伸びてたんだな」


湊が意地悪な顔をしてからかってきたから、鞄を思いきりぶつけてやった。