「理由ならあるでしょ」
ぼそっと言った湊の言葉に、“?”が大量に頭の中に浮かぶ。
理由、あるのでしょうか。
「友達、だし」
「そっか。確かに。じゃあ、湊は取ってるの?」
もう、人前でも湊のことは湊って呼ぶようになった。
誰も“付き合ってるの?”とは言わない。
「たまに。あいつ、今は帰宅部だってさ」
「そう、なんだ」
当たり前だけど、知らなかった。
もし野球部に入部したとしても、1年もしないうちに引退しないといけないからあきらめたのかな。
「連絡、取ってやれば?」
「うん、そうだね」
『考えとく』と言って、床に脱いだ上靴を靴箱に入れ、ローファーを出して足を入れた。
『考えとく』とは言ったものの、多分私は連絡を取らない。