「やっぱり、いい子だったね。九条くん」

「ど、どこが……!?」

「ちゃんと先輩って付けてくれるところ?」

すずちゃんのいい人ジャッジ甘くない?

色々、心配になる。

はぁ。なんだか今日は朝から疲れた。

それもこれも全部アイツのせい。


「早く下校時間にならないかな」

「まだ1限も始まってないよ?」

「ねぇ、すずちゃん。帰り甘いもの食べて帰ろうよ」

こういう日は糖分を摂取するに限る。

「いいね!アイス?クレープ?あ、駅前のカフェ新作出てたよ」

「うーん、迷うな〜!」

そうそう、私にはこういう会話が一番合ってる。

さっきのことはさっさと忘れよう。

どうせもうアイツとは話すこともないだろうし。


それに、私はもう余計な期待も恋も、しないって決めたんだから。

「すずちゃんは何がいい?」

「私はねー、って先生来た。席戻るね」

「またあとで話そ」

自分の席へと戻るすずちゃんに小さく手を振る。


平穏な日々がもうすぐ終わりを告げることを、このときの私はまだ知る由もなかった───。