この数年、私達はどうやらお互い振られた。そう思い込んでいたらしい。

「じゃあ、穂波先輩。本当はあの公園でなんて言うつもりだったの?」

……やっぱり、そうなるよね。

渚はもうたくさん伝えてくれた、今度は私が素直にならないと。

「渚の言うとおりだよって。私は渚のことが好き。……今も同じ気持ち」

その言葉にさっきまで浮かない顔をしていた渚が笑う。

そして、

「俺もずっと穂波先輩のことが好きだった。壁越しに言ったことはどれも本音。だけど、“好き”って言葉だけは壁越しじゃなくて、ちゃんと顔を見て言いたかったんだ」と言った。



「ねぇ、壁が原因じゃないならどうして帰るの?」

お互いの気持ちを確認し合った私達は肩の触れ合う距離に座り、話を続けた。


「あー。俺、穂波先輩のお父さんと約束してんの。同居中、娘さんには手を出しませんって。でも、昨日このままじゃ制御できないなと思ったから」

昨日……その言葉によりキッチンで起きた一部始終を思い出す。

そういえば、告白よりももっと大胆なことをしかけてたんだ。

渚が出て行く衝撃で忘れてた。