その後、日向は泣き疲れたのかソファの上で眠りについた。
そして、私はというと……
「本当に帰るの?」
渚を自分の部屋へと呼び出した。
「うん」
「連休中でも、ずっと友達とご飯食べるわけじゃないでしょ。あ、朝ごはんとかも大切だし、お兄さんが戻ってくるまでいれば?」
もっと他に言い方があるかもしれないが、これが今の私の精一杯。
「静香さんには連休だからって言ったけど、理由は他にもあって」
渚はそう言うと自分の部屋の方、2人の部屋を繋ぐ壁に視線をやった。
もしかして、その理由って。
「か、壁が薄いのに気づいたから帰っちゃうの?」
本当は告白するときに一緒に謝るつもりだった、壁の話。
そいえばここ数日、渚の部屋からは物音しか聞こえなかった。
「ご、ごめん。本当はもっと早く言うつもりだったんだけど。その……渚の声が聞こえてたって言いづらくて」
声というよりもその内容が。
「いや。それは、前から知ってるけど」
「なんだ、前から知ってたのか。…って、えっ、前から知ってたの!?」
その事実はある意味、渚が今日出ていくことよりも衝撃だった。
「いつから気づいてたの?」
「ここに来て2日目?静香さんが穂波先輩の部屋にハサミ探しに来たときに気づいた」
そんな前から!?
じゃあ、ずっと知ってて喋り続けてたってこと?
……ってことは、やっぱり私をからかってた説が濃厚。