昨日から私と渚は必要以上の会話はせず、目も合わせない。そんな冷戦状態が続いていた。

こういうときに限って、隣から聞こえてくるのは物音だけ。

「ねーねー!穂波ちゃん聞いてる?」

「え?き、聞いてるよ」

今日は祝日。


お母さんは朝から仕事へ行き、私と日向はリビングで、渚は自分の部屋で各々好きな時間を過ごしている。

「プリン食べてもいい?」

「あ、そういえばおやつの時間だね。食べよっか」

「わーい」

おもちゃを片付けて冷蔵庫へと走る日向。

その後を追うと、日向はなぜかシンクの前で立ち止まっていた。

「どうしたの?」

「ほ、穂波ちゃん!見て」

小声で話しかけてくる日向の指差す方。

そこには……、

黒くて、カサカサと動くヤツ(ゴキブリ)がいた。


「ひぃ、日向!とりあえずこっちおいで」

私の言葉にゆっくり後退りする日向。


「大丈夫、怖くないよ。お、お姉ちゃんに任せなさい」

そう言うと日向は廊下の方へと走っていく。