「あら、冗談じゃないわよ」


そう言いながら、姿を見せたお母さん。

「ほら、そんなところで喋ってないで」と私達3人をリビングへと誘導する。

「お母さん、これどういうこと!?」

「まぁまぁ、座って」

続いて日向もお母さんが言った言葉をそのままそっくり繰り返す。

……そうだ、日向の前だった。

一旦、落ち着こう。


「それで……あの……九条くんと一緒に暮らすってどういうこと?」


いつもはお父さんが座る席、今はそこに九条渚が腰を下ろす。

「渚くん、ご両親が海外にいてお兄さんとふたり暮らしらしいの」

話はそんなところから始まった。


そういえば昔、年の離れたお兄さんがいるって話を聞いたことがある……。


「それで?」


「そのお兄さんが昨年からお父さんと一緒の会社に勤めてて、今回の出張に同行することになったのよ」

つまり、九条渚はその間ひとり暮らしになるってこと?

でも、だからといってうちに来る意味がわからない。

友達なら数え切れないほどいるだろうし、女の子だって九条渚が言えば簡単に泊めてくれるだろう。



「それで、渚くんのことを心配したお父さんが『うちに泊まってもらえばいいじゃないか』って」

……お父さんっっ!!

年頃の娘がいるっていうのに、色々と心配じゃないのかな?