「穂波ちゃん、渚くんが呼んでるよ?」


耳元で聞こえた日向の声に思わず目を開ける。

……今、渚くんって言った?


いやいやいや、何かの聞き間違いでしょ。


日向があの男を知るはずがないし。

なんて思っていると、「あ、やっと目開けた」と今度は今までの行動を全て見ていたかのような言葉が。

いや、まさか……まさかね?


恐る恐る視線を上げる。


そして、目に入ったのは今日久しぶりに顔を合わせた九条渚の姿だった。



「な、なんであんたがここに……」


「穂波ちゃん!あんたじゃないよ、渚くんだよ」

「あ、ごめんなさい」

……って、確かに言葉遣いは大事なんだけど。

それよりも、今重要なのは……。


「う、うちで何してるの……?」

「またねって言ったじゃん」

「あ、そうだったね!……って、そうじゃなくて。なんであんたがうちにいるのよ」

「もー穂波ちゃん渚くんだよ。渚くんはねー、今日からうちで一緒に暮らすんだよ!」

日向は天使のような微笑みを見せながら、悪魔のような言葉を並べる。


今日から?うちで?一緒に暮らす……?


「日向、何かの冗談だよね?」